12月と1月のscheduleとCD評
2017/12/03
地底レコードからリリースされたParhelic circlesのCD評をjoeさんと田中啓文さんから掲載頂いたのでこちらに掲載させていただきます。誠にありがとうございます。
以下joe氏のブログより
加藤崇之さんとのデュオアルバム「Ocean voice」(7月18日参照)で不思議な印象を残した九州在住ギタリスト波多江崇行氏と、おなじみ川下直広さん・小山彰太さんによるトリオアルバム。今年5月、福岡でのライブとのこと。前記作ではエフェクトをふんだんに使っていたが、本作ではしっかりとギターのサウンドである。オーネット・コールマンの演奏で有名な「メアリー・ハートマン」もやっているが、聴きどころはやっぱりCDの大半を占めるタイトル曲(即興)で、意外や音で埋め尽くすのではなく、スカスカな空間のありようが何とも味わい深い。
そういえば今年3月になってるハウスで川下直広カルテットを観た時、ちょうど道徳の教科書検定で「パン屋」が反郷土的だと意見が付けられ出版社が「和菓子屋」に変えたというニュースが世間を騒がせていたころで、川下氏が「そのうちジャズは反郷土的だとして演奏できなくなるかもしれないが、望むところだ」みたいなことを言って演奏を始めたのは心底カッコよかったのだけれど、今度はできれば曲主体でなく即興主体の生演奏を体験したいなあ、と思ったのだった。
以下は田中啓文氏のCD評
長い即興が2曲と、短いチューンが1曲。まず1曲目は38分もある。はじめは本当に子どもが楽器で遊んでいるのか、というようななにげない感じで音がぽろり、ぽろりと出始めるのだが、そこにドラムが加わると、ギターがベースのように律動を送りはじめ、テナーがぐねぐねともがくような音塊を発しだし、次第に三人が高まっていく。やがて、テナーが消えると、ギターとドラムのデュオになるのだが、ギターの訥々とした、一音一音を愛おしむような弾き方は小山彰太の、これまた一打一打に魂を込めたドラムと相性よくからみあう。再びテナーが復活したあたりからはどろどろした熱気が渦を巻き、一ミリ一ミリとどんどん上昇していくのがわかる。フリーになってからもけっしてアブストラクトにならず、三人とも具体的なフレーズをぶつけあう。テナーの無伴奏ソロからまたべつの展開になるが、このあたりの呼吸は見事としかいいようがない。ギターが、どんなにフリーインプロヴァイズド的な状況でもすぐにしっかりしたアイデアをはっきりした明確な意志のもとに打ち出すので聴いていて心地よい。そこからの三者一体となった突撃におけるテナーの咆哮は聞きものである。かっこいい! そのあとのドラムとギターのデュオもめちゃくちゃかっこよくて、展開がスピーディーにころころ変わっていくので一瞬も気を抜けない。しかも、単に目まぐるしく目先が変わるだけの演奏ではなく、ちゃんとグルーヴがあり、ダイナミクスもある。ギターがギターという楽器の特性を全部いかして攻めているので気持ちがいいのだ。テナーが再び登場し、混沌とした世界になるが、この3人だとけっして凶悪にならず、どこかメジャーの歌心が感じられるのもいいですなー。このあたりからの、3人がそれぞれやりたいようにやりながらそれがアンサンブルとして機能し、たがいを刺激しあってぐいぐいと盛り上がっていくさまは感動的である。安易に一直線に頂上を目指さず、ゆっくりと山を上っていくとだれよりも高いところへ来ていた……という演奏。しめくくりもすごくいい。2曲目は、川下さんはお休みで、ギターとドラムのデュオ。ギター主体で開幕。50秒を過ぎたあたりで、けっこうでかい声でこどもがしゃべるのが聞こえ、笑ってしまう。そのへんからドラムが入ってくる。カラフルなリズムに乗ってギターの饒舌な即興。でも、間をいかしているので空間はたっぷり余っていて、息苦しくない。いやー、めちゃくちゃかっこええやん、このデュオ! 何歳歳の差あるねん! と叫んでしまった(本当に何歳開いているのかは知らない。そんなことは微塵も感じさせない、いきいきとした創造的な演奏である)。ドラムによる幕引きも見事。そして3曲目はオーネット・コールマンとチャーリー・ヘイデンのデュオ「ソープサッズ・ソープサッズ」(持っていない)に入ってる有名な曲らしいが、美しいテーマメロディをテナーが変奏しながら吹いていく。ほとんどむき出しの、つまり川下直広そのままの、ギミックのない自然な「音」で吹き上げる。ギターとのからみもすばらしく、どうなるのかな、と思っていると、いきなり終わる。たった4分ちょっとの演奏。でも、この演奏を収録したかった気持ちはよくわかる。いやー、最高の食後のデザートを食べた感じです。川下の息遣いまでリアルに録音されていて、音をたくさん使っているのにまるで押し付けがましくなく、逆に「音数が少ない」ように聞こえる。この飄々とした雰囲気は、川下さんはもはやフリージャズのデクスター・ゴードンのような境地にいるのではないか(なんのこっちゃ)。
アルバム全体に小山彰太のドラムが輝きまくっている。ものすごく引き出しが多く、ふところが深いので、同じような場面も同じにならない。そんなことは当たり前だというなかれ。同じことが延々とだらだら続き、そこから抜け出せない即興がいかに多いことか。先日小山さんのレコーディングにお邪魔する機会があったのだが、とにかくパワフルで、活力に満ちていて、演奏していないときもずっと口は動いている。「おっ、おにぎりか、いいねえ、俺ももらおうかな、俺、マヨネーズはだめなんだよね、えーと、ツナマヨ、エビマヨ……マヨネーズばっかりじゃねえか! あ、こっちにちがうのあった。シャケと昆布か。今日は昆布でいこうかな」……全部口に出す。すばらしい。そして、リーダーの波多江崇之。千変万化するサウンドで何人分もの役割をこなしていて、しかも猛獣ふたりに一歩も退かず、といって気負った感じもなく、すーっと心の奥に入り込んでくるようなメロディ、リズム、ハーモニーを自然につむぎだす。スナフキンのようにかっこいいではないか。タイトルの「パーヘリック・サークル」というのは、なんじゃいな? と思っていたが、「幻日環」という気象現象だそうだ。本人のライナーによるといろいろと意味を込めたタイトルらしいが、地底レコードの吉田さんのCD紹介には「分かったような、分からないような表現ですかね?」と書いてあって笑えました。傑作。
以下は今後のscheduleです。
12/3 佐賀 夢楽人
川下直広ts+舞踏
12/7Riverside
ROCINANTE
川下直広ts,ba上村計一郎dr
12/9 alfie
川下直広ts
12/10伊都カフェ
セッション
12/11Riverside
インプロセッション
12/12 伊都カフェ
川下直広ts
12/13八幡デルソル
ROCINANTE
川下直広ts,ba上村計一郎dr
12/16八幡デルソル
武井康郎dr フクヤマワタルba 堀尾茂雅tp 松岡涼子dance
12/24久留米J`s bar
MAYUMI(vo)中瀬亨ba上村計一郎dr
12/27riverside
武井康郎dr フクヤマワタルba 堀尾茂雅tp 松岡涼子dance
12/29糸島speake easy
kayo(vo)
1/7AMG live at rooms
昼の部open14:40 start15:00
夜の部open18:30 start19:00
前売り2500(当日3000)
学生1000
1/10 riverside
ROCINANTE
川下直広ts.ba上村計一郎dr
1/13 new combo
FUKUOKA JAZZ GUITAR SUMMIT
start19:30 charge3000(3500)
1/15 alfie
川下直広ts
1/21 八幡デルソル
舞踏4人とのコラボ!!
徳永恭子、宮原和枝、王丸せいこ、長沢あゆみ(全員舞踏)
1/27 伊都カフェ
宗さんpiano 弓口由美子vo